自宅の購入をする方のほとんどは住宅ローンを利用すると思います。
その住宅ローンですが、選ぶ軸は様々あるとは思いますが今回の記事では支払総額にフォーカスして比較を行いたいと思います。
その支払総額を決める重要なファクターが「金利」と「事務手数料」です。ここに注目します。
住宅ローンの総支払額を決定づける要素
住宅ローンの支払総額を決めるのは、以下4点です。
- 借入金額(ローンで融資してもらう金額)
- 借入期間
- 金利
- 事務手数料
この内、借入金額に関してはどの程度の物件を購入できるかを、自身の資産状況や給与状況から考えられているかと思います。
本記事ではこの幾ら借りてよいかに関しては取り上げません。あくまで借入金額は確定した後の話をします。
同時に借入期間も金利と合わせて支払総額を決める重要な要素です。
ですが、本記事では借入期間は住宅ローンの最長である35年を前提として比較します。(基本的に低金利であれば長く借りることができるというのは大きなメリットです。)
ということで、幾ら借りるか、どの期間をかけてローン返済をするかは固定とし、本記事では、「金利」と「事務手数料」による差に関して取り上げます。
住宅ローンにおける「金利」と「事務手数料」
そもそも、「金利」と「事務手数料」に関してどのような考慮点があるのでしょうか。
金利
基本的に本記事では変動金利を想定してシミュレーションを行いますが、固定金利でも考え方は同じです。
金利は各銀行が激しい競争をしています。以下に各銀行の2023年3月時点の変動金利の金利を載せました。金利だけみるとネット銀行が低金利ですね。auじぶん銀行は、、とてつもない低金利を提示しています。
なお、こちらはキャンペーンであったり各種条件を満たした際に提示される最低金利ですので全員がこの金利で住宅ローンを借りられることではありませんのでご注意ください。
銀行名 | 変動金利(%) |
---|---|
三菱UFJ銀行 | 0.475 |
三井住友銀行 | 0.475 |
みずほ銀行 | 0.375 |
auじぶん銀行 | 0.289 |
住信SBIネット銀行 | 0.410 |
SBI新生銀行 | 0.320 |
PayPay銀行 | 0.349 |
楽天銀行 | 0.550 |
金利だけは見る分には当然ですが低い方が良いですよね。問題は、金利も低く事務手数料も安いという銀行は中々ないということです。ここが本記事のポイントです。
事務手数料
では各銀行の事務手数料を比較してみます。
基本的に事務手数料は借入額の2.2%という銀行が多いですね。正直、住宅ローンの事務手数料は高すぎるのではないかと思っています。
この場合、例えば6,000万円の借り入れの場合は132万円となります。かなりの金額ですし、住宅ローンを契約する際に必要となる初期費用となります。
一方で楽天銀行は特殊で一律33万円となっています。
この一律というのがポイントで、借り入れ額が大きくなるほど他の銀行と比較して事務手数料の安さが際立ってくることになります。
ただし、先に記載の通り楽天銀行は他の銀行と比較すると金利がやや高くなります。
さて、金利が低い銀行が良いのか、楽天銀行のように事務手数料が安い銀行の住宅ローンが良いのか気になりますよね。
本記事ではここをシミュレーションしてみたいと思います。
総支払額の比較結果
シミュレーションの条件
総支払額のシミュレーションを行う前提条件を以下とします。借入金額ごとに2パターン実施しようと思います。
なお、金利は変動金利を想定してシミュレーションを行いました。35年ローンで元利均等返済です。
パターン1:借入金額6,000万円
A.事務手数料が低い銀行はずばり楽天銀行です。
B.金利が低い銀行はみずほ銀行をイメージしています。他にもネット銀行でより低い金利のものもありましたがキャンペーンや適用条件が細かく存在していたので除外しました。
条件項目 | A.事務手数料が低い銀行 | B.金利が低い銀行 |
---|---|---|
金利 | 0.535% | 0.375% |
事務手数料 | 33万円 | 借入金額×2.20%(132万円) |
パターン2:借入金額4,000万円
パターン2は借入金額のみ変えておりその他は同じです。(借入金額に依存する事務手数料は合わせて変わります)
条件項目 | A.事務手数料が低い銀行 | B.金利が低い銀行 |
---|---|---|
金利 | 0.535% | 0.375% |
事務手数料 | 33万円 | 借入金額×2.20%(88万円) |
シミュレーションの結果
パターン1:借入金額6,000万円
- 35年間では、約80万円「A.事務手数料が低い銀行」の方が支払総額が大きくなる
- ローン開始から20年目までは「A.事務手数料が低い銀行」の方が支払総額は小さく、20年目に逆転する
条件項目 | A.事務手数料が低い銀行 | B.金利が低い銀行 |
---|---|---|
支払総額(35年間) | 6,614万円 | 6,535万円 |
支払総額(20年間) | 3,793万円 | 3,791万円 |
パターン2:借入金額4,000万円
- 35年間では、約60万円「A.事務手数料が低い銀行」の方が支払総額が大きくなる
- ローン開始から17年目までは「A.事務手数料が低い銀行」の方が支払総額は小さく、17年目に逆転する
条件項目 | A.事務手数料が低い銀行 | B.金利が低い銀行 |
---|---|---|
支払総額(35年間) | 4,420万円 | 4,357万円 |
支払総額(17年間) | 2,164万円 | 2,161万円 |
上記2パターンのシミュレーションをした結果を見てどうでしょうか。
個人的には、35年間支払いしたとしてもそれほど多きい差はないなと思いました。
加えて、17〜20年以内に自宅を売却する場合は「A.事務手数料が低い銀行」の方が支払総額が抑えられることから、多少でも売却(引っ越しをする等)可能性がある方は「A.事務手数料が低い銀行」を選択しておくのは良い判断なのではと思えました。
※この先定住する、繰り上げ返済をガシガシするという方は少し変わってくるかと思います。
また借入金額の大きさによってシミュレーション結果は変わるのでご注意ください。金額が小さいほど事務手数料の差が小さくなるためです。当たり前ですが大きい金額を借りる人ほどしっかり比較するのが大事です。
パターン3(番外編):借入金額6,000万円で、auじぶん銀行の0.289%の場合
多少適用に条件がありますが、現在(2023年3月)最も金利が低いauじぶん銀行のケースを追加で載せておきます。
- 35年間では、約170万円「A.事務手数料が低い銀行」の方が支払総額が大きくなる
- ローン開始から13年目までは「A.事務手数料が低い銀行」の方が支払総額は小さく、13年目に逆転する
条件項目 | A.事務手数料が低い銀行 | B.金利が低い銀行 |
---|---|---|
支払総額(35年間) | 6,614万円 | 6,441万円 |
支払総額(13年間) | 2,477万円 | 2,475万円 |
なんと13年目で逆転します。これくらいの金利差があるとぐぐっと支払総額が逆転する時期が早まった気がします。
住宅ローン控除をひとしきり受けきって売却したい方は、今までのシミュレーション結果同様に「A.事務手数料が低い銀行」で良いかもしれません。
浮いた事務手数料を資産運用にまわしてみた時のシミュレーション結果
さて、事務手数料は住宅ローンを契約する時に支払います。もしここで節約できた分を資産運用に回すことができたらどうなるでしょうか。
節約できた分というのは、「B.金利が低い銀行」の事務手数料 から「A.事務手数料が低い銀行」の事務手数料の差額分のことです。
支払いせずに手元にお金を残せたということで、この現金を運用に回してみましょうという魂胆です。
6,000万円の借入という条件ですと、事務手数料の差額は99万円になります。(132万円-33万円)
この99万円を例えばインデックス投資の原資に利用して、4%で運用したと仮定しましょう。どうなるでしょうか。
条件項目 | A.事務手数料が低い銀行 | B.金利が低い銀行 |
---|---|---|
支払総額(35年間) | 6,614万円 | 6,535万円 |
支払総額(35年間)※資産運用で得られた資金を支払総額からマイナス | 6,473万円 | 6,535万円 |
35年間99万円の原資を年利4%で運用できたと仮定して、支払総額から最後マイナスしています。その結果は35年間の支払総額で逆転が起こらず、最後まで「A.事務手数料が低い銀行」の方が支払総額を抑えられるという結果になりました。
これは面白い結果ですね。様々な仮定を置いていますので、当然借入金額や、運用利回りでシミュレーション結果は変わってきます。皮算用という面が大きいかもしれませんが、それでも手元に現金を残しておき、適切に運用するというのは大きなアドバンテージになるように感じました。
※当然ですが、年利4%で安定的に資産運用ができる保証はありませんので、あくまで1つのシミュレーションとして捉えていただければと思います。
まとめ
以上、住宅ローンを「事務手数料」と「金利」で総支払額を比較してみました。
実は私も住宅ローンを選ぶ際にどちらを選択するべきか悩んで様々な計算を行いました。まさにその内容が本記事のものです。
最終的には楽天銀行さんにお願いすることにしました。つまり事務手数料が安い銀行を選んだということです。
理由は、永住するかわからない(売る可能性が現時点ではある)、手元資金をできるだけ残しておきたいという2点です。
私の判断が全員に当てはまるとは思いませんが、ぜひ住宅ローンの選択時の参考にしてみてください。
※計算が間違っている等あれば申し訳ありませんがこっそり教えてください。また、住宅ローンを決める際には自身でも計算をして確認をお願いします。