はじめに
今回は、金融商品に対する格付けに関してです。
先日なのですが、「米国トータル債券市場ETF(BND)」に関する記事を書きました。基本的に私は米国株式への長期積み立て投資を基本としていますが、債券に興味があるかはたこちらを参考にしてみてください。
米国トータル債券市場ETF(BND)の記事の中で、投資適格債券という言葉が出てきています。
この「投資適格債券」という言葉ですが、発行されている債券の信頼度に基づき区別されており、その信頼度が投資に値するということを意味しています。
では、この信頼度の調査や認定は誰が行うのでしょうか?
この認定(よく格付けと言われますので、以降格付けとします)をするのは国などの公共機関ではなく、格付けを仕事にしている民間の会社が存在しており、彼らが発表しています。
その会社として、スタンド&プアーズ社(S&P社)と、ムーディーズ社(Moody's社)の2社が世界的に有名です。
今回はこれらの会社の格付け定義をまとめておこうと思います。債券など投資先の判断をする際には、彼らの格付け結果が必ず出てくると思いますよ。
信用格付け会社
まず、スタンド&プアーズ社(S&P社)と、ムーディーズ社(Moody's社)のような会社は、「信用格付け会社」と呼ばれます。
信用格付け会社とは、金融商品や商品を発行する組織に対してその信用状態に関する評価を行い、信用状態の格付けを行う機関です。
投資家の多くは、彼らの格付け結果を参考にして投資にあたってのリスクを判断します。ただ記憶に新しいリーマンショック時は、もともと高格付けだったサブプライムローンが数日でジャンク債に格下げされるなど、彼ら信用格付け会社の評価に対する信頼性を疑問視されるという大事件となりました。
とは言え、多くの投資家の判断基準になっているのは変わりなく、銘柄の価格に大きな影響を持っています。今回は信用格付け会社の内、大手2社の格付け定義に関して扱います。
スタンド&プアーズ社(S&P社)
信用格付け会社のスタンダード&プアーズ社です。
アメリカに拠点を置く非常に有名な会社で信用格付け市場筆頭の1社です。世界最大手のS&P社は150年以上の歴史を持ち世界28カ国以上で事業を展開しているグローバルな会社です。
ムーディーズ社(Moody's社)
ムーディーズ・インベスターズ・サービスという会社です。アメリカに拠点を置く格付け会社で、S&Pと並ぶ2大格付け会社の一つです。
格付けに関して
一般的に格付けには「個別債務格付け」、「発行体格付け」という区分があります。
さらにそれぞれにおいて、「長期」、「短期」という区分も設定されています。
個別債務格付け、発行体格付け
これは格付け対象の違いになります。
個別債務格付けは、その商品自体の信用度の格付けです。
一方で発行体格付けは、商品を発行する組織や会社への格付けです。
長期、短期
格付けと言うと基本的には長期間を想定した格付けが一般的です。
直近の業績の結果が、長期目線の業績の結果と著しく異なる場合は短期目線の格付けも判断材料として採用していくかたちになります。
今回の記事では、最も一般的である「長期」を前提に格付け定義を扱っていきます。
定義表
というわけで各社の定義をまとめました。
今回は「長期」で「個別債務格付け」を前提として比較しています。というのも、個別債務と発行体に関しては定義がかなり似ているのです。そのため発行体格付けは割愛しています。長期、短期の方に関しては、長期が一般的ということで長期を取り上げます。
では、以下が各社の定義を並べた表になります。
No. | S&P | ムーディーズ | 定義 | |
---|---|---|---|---|
投資適格 | 1 | AAA | Aaa | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は極めて高い。S&Pの最上位の発行体格付け。 (ムーディーズ)支払能力が極めてすぐれているムーディーズの最上位格付け。 |
2 | AA+ | Aa1 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は非常に高い。最上位の格付け「AAA」との差は小さい。 (ムーディーズ)信用力が高いと判断され、信用リスクが極めて低いものに対する格付け。 | |
3 | AA | Aa2 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は非常に高い。最上位の格付け「AAA」との差は小さい。 (ムーディーズ)信用力が高いと判断され、信用リスクが極めて低いものに対する格付け。 | |
4 | AA- | Aa3 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は非常に高い。最上位の格付け「AAA」との差は小さい。 (ムーディーズ)信用力が高いと判断され、信用リスクが極めて低いものに対する格付け。 | |
5 | A+ | A1 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は高いが、上位の格付けと比べ事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい。 (ムーディーズ)中級の上位と判断。信用リスクが低い商品に対する格付け。 | |
6 | A | A2 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は高いが、上位の格付けと比べ事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい。 (ムーディーズ)中級の上位と判断。信用リスクが低い商品に対する格付け。 | |
7 | A- | A3 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は高いが、上位の格付けと比べ事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい。 (ムーディーズ)中級の上位と判断。信用リスクが低い商品に対する格付け。 | |
8 | BBB+ | Baa1 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い。 (ムーディーズ)中級の判断。信用リスクが中程度であるゆえ、一定の投機的な要素を含みえる。 | |
9 | BBB | Baa2 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い。 (ムーディーズ)中級の判断。信用リスクが中程度であるゆえ、一定の投機的な要素を含みえる。 | |
10 | BBB- | Baa3 | (S&P)債務者がその金融債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い。 (ムーディーズ)中級の判断。信用リスクが中程度であるゆえ、一定の投機的な要素を含みえる。 | ジャンク格 | 11 | BB+ | Ba1 | (S&P)債務者がある程度の質と債務者保護の要素を備えている場合もあるが、その効果は、不確実性の高さや事業環境悪化に対する脆弱さに打ち消されてしまう可能性がある。 (ムーディーズ)投機的と判断され、相当の信用リスクがある商品に対する格付け。 |
12 | BB | Ba2 | (S&P)債務者がある程度の質と債務者保護の要素を備えている場合もあるが、その効果は、不確実性の高さや事業環境悪化に対する脆弱さに打ち消されてしまう可能性がある。 (ムーディーズ)投機的と判断され、相当の信用リスクがある商品に対する格付け。 | |
13 | BB- | Ba3 | (S&P)債務者がある程度の質と債務者保護の要素を備えている場合もあるが、その効果は、不確実性の高さや事業環境悪化に対する脆弱さに打ち消されてしまう可能性がある。 (ムーディーズ)投機的と判断され、相当の信用リスクがある商品に対する格付け。 | |
14 | B+ | B1 | (S&P)保険財務力が弱い。事業環境が悪化した場合、債務を履行する能力が損なわれる可能性がある。 (ムーディーズ)投機的と判断。相当の信用リスクがあるとされる。 | |
15 | B | B2 | (S&P)保険財務力が弱い。事業環境が悪化した場合、債務を履行する能力が損なわれる可能性がある。 (ムーディーズ)投機的と判断。相当の信用リスクがあるとされる。 | |
16 | B- | B3 | (S&P)保険財務力が弱い。事業環境が悪化した場合、債務を履行する能力が損なわれる可能性がある。 (ムーディーズ)投機的と判断。相当の信用リスクがあるとされる。 | |
17 | CCC+ | Caa1 | (S&P)保険財務力が非常に弱い。債務の履行は良好な事業環境に依存している。 (ムーディーズ)投機的で安全性が低い。信用リスクが極めて高いとされる商品への格付け。 | |
18 | CCC | Caa2 | (S&P)保険財務力が非常に弱い。債務の履行は良好な事業環境に依存している。 (ムーディーズ)投機的で安全性が低い。信用リスクが極めて高いとされる商品への格付け。 | |
19 | CCC- | Caa3 | (S&P)保険財務力が非常に弱い。債務の履行は良好な事業環境に依存している。 (ムーディーズ)投機的で安全性が低い。信用リスクが極めて高いとされる商品への格付け。 | |
20 | CC | Ca | (S&P)不履行はまだ発生していないが、将来的に不履行は確実と予想するもの。 (ムーディーズ)非常に投機的。デフォルトに陥っており、元利の回収の見込みも極めて低い商品への格付け。 | |
21 | D | C | (S&P)すでに不払いが生じている、不履行があるとS&Pが判断していることを示す。 (ムーディーズ)最も格付けが低く、デフォルトに陥っている。元利の回収の見込みも極めて低い商品への格付け。 |
こう見ると非常に細かいのが分かるかと思います。そして、S&P社でいうBBB以上、ムーディーズ社でいうBaa以上が投資適格級となるのが分かるかと思います。
余談ですが、日本国債は、「A+」の判定になります。
もし画像版をご希望の方はこちらです。
まとめ
はい。今回は投資対象の信用度を判断するための格付けに関してでした。皆さんも投資対象を考えるときに確認してみてはいかがでしょうか。